巡礼

話し、つづけ
歌い、つづけ
歩き、つづけるうち
清冽で敬虔なこの疲れは
巡礼のまなざしに服従した
沈丁花の香りがこの腕を吹きすぎて
残留した冬の薄い陽はプレパラートを浸潤し
転落する睡りにはいまだほど遠く
被膜の侵される、よろこびの幼さが
たえずさざめかす繊毛に、見させる夢
すべては似姿だ  かきたてられるものは
たたえるな 数えるな
ただうけとめるだけをうけとめて
油一枚ひいた肌を 覚醒した虚実の洪水に
ためしてみる 一瞬
私に触れてほしい
私は"ひび"を入れられたいのです  だから
このままでいさせてください
あなたと話したいのです   この、ままで
受けきりたい 受けきりたいから
でも待たなくてよいです、この受け身は
切り崩した崖のように  いま
ただ巡礼の鐘を聞く僥倖にありますから
あなたのまなざしの名のもとにーー